※アイキャッチ画像は「PDPhotosによるPixabayからの画像 ヨセミテ国立公園」
Yosemite National Park ( United States of America ) OUV(vii)(viii)
1984年世界遺産登録
■地殻変動と氷河によって作られた特異な景観と、それを守ろとする人々の軌跡
カリフォルニア州中部のシェラネバダ山脈西側斜面に広がるU字谷や湖、数多くの滝、巨岩など壮大な自然美が広がった山岳自然公園が世界遺産に登録されています。
このダイナミックな大地を演出しているのは氷河によって削られた巨大な花こう岩。 その深さ約1200mのヨセミテバレーや、ワウォナ・トンネルを抜け、マリポサ・グローブのジャイアント・セコイア等、ネイチャーツーリズムを主に訪問する観光客は年間400万人とされます。それでも観光客が訪れるのは国立公園の数%、ほんの一部のエリアだというのだから驚きです。95%が手つかずの自然なのです。
1000万年前からのシエラネバダ山脈の隆起と浸食の連続により、地中の花崗岩は地表に表れ、その結果、岩石表面の剥離によって”ハーフドーム”と呼ばれる特殊な地形等が出現し、さらに固い花崗岩はその後浸食があまり進まずに、氷河期の形を今もなお残しているそうです。
ここシエラネバダには、少なくとも4回の氷期が訪れ、ヨセミテ渓谷等も一時氷河で埋め尽くされた時期がありました。この時の氷河がヨセミテ渓谷等の地形を主に形作ったものと考えられています。
尾根の近い場所には、氷河の浸食によって生じたお椀状の地形”カール”があります。このカールの下には、さらに”モレーン”という地形が生じました。氷河によって大地が削られると、その先に氷河が運んだ岩石や土砂が土手のように形成し、これをモレーンというそうです。
こうした特異な地形に数多くの滝、湖を形成したことで、ミュールジカ、クロクマ、ピューマ、テンなどの野生動物が生息し、レッドウッドの森も見られ、登録基準にこそありませんが、豊かな生態系も存在します。
熊との共生のため、キャンプ場では食べ物と匂いのつくものは専用のロッカーにしまうことが義務づけられています。
また、この地域もまた、先住民族と入植した白人との歴史があります。ヨセミテという呼び名はのちにアメリカ人によってつけられたものです。オーストラリアの「ウルル・カタジュタ国立公園」「ガリ」やカナダ「ピマチョン・アキ」で見られるように、今後先住民の名前に変わる日が来るかもしれません。
一方で、アメリカ人によって自然が保護されきた一面もあります。
ナチュラリストの草分けであるジョン・ミューアは、のちに国立公園の概念の形成に繋がる活動をされた植物学者ですが、彼はこの地で森林伐採やダム計画の阻止のために尽力しました。ジョン・ミューア・トレイルは、カリフォルニア州内を、ヨセミテ峡谷からマウント・ホイットニーまで、340キロメートルにわたって縦走する長距離遊歩道を指し、彼の名前にちなんでつけられました。
また、写真家であり登山家であったアンセル・アダムスは、ヨセミテの自然に魅せられ、人の手が入る前の写真の撮影と記録等、環境保護に尽力された方も有名です。