◇文化的景観(Cultural landscapes)

1990年に世界自然遺産として登録された、美しい山や大自然が魅力的なニュージーランドの「トンガリロ国立公園」。登録基準は、自然遺産の評価となる(ⅶ)(ⅷ)が認められました。

しかし1987年から申請されていたにも関わらず3年もかかったのには、当時世界遺産条約の第一条、モニュメント・遺跡・建造物群のいずれにも該当しないということで棚上げにされていました。そう、ニュージーランド政府はここは自然ではなく文化遺産として申請していたのです。

そして1993年の第17回世界遺産委員会では、ここはマオリ族にとっての信仰の対象であり、自然美だけではない価値感が共有されました。文化的な登録基準の(ⅵ)が追加され、複合遺産に変更されたのです。

これ以降、自然遺産として認められなくとも自然を文化的な側面から判断し、世界遺産に登録するという概念が生まれました。

Cultural landscapes are cultural properties and represent the “combined works of nature and of man” designated in Article 1 of the Convention. They are illustrative of the evolution of human society and settlement over time, under the influence of the physical constraints and/or opportunities presented by their natural environment and of successive social, economic and cultural forces, both external and internal.

英文はユネスコ世界遺産センターより引用

https://whc.unesco.org/archive/1993/whc-93-conf002-14e.pdf

文化的景観:「自然と人間の共同作品(景観)」に相当するもの。庭園や公園、宗教的な対象の自然、文化や経済的に影響を受けて進化してきたもの。これが認められるのはつまり文化遺産、あるいは複合遺産であります。1992年に世界遺産条約履行のための作業指針に新たに加えられました。

作業指針によると、文化的景観を評価する際には「特定のタイプの資産評価におけるガイドライン」に従うことになっています(つまりは特別な扱いになっています)。なお、特定タイプには他に「道」「運河」などがあります。ここでは、文化的景観は3つのカテゴリーに分類されます。

landscape designed and created intentionally by man:人類によって意図的に造りだされ、デザインされた景観。例)公園・庭園

organically evolved landscape:有機的に進化・発展された景観。これはさらに過去に起こった結果によるものと、現在も社会の中で継続している生きた景観の2つに分類される。例)遺跡や棚田

associative cultural landscape:関連している文化的景観。宗教的・芸術的・文化的な自然と強く関連がある景観。例)聖山など

なお、文化的景観の概念が誕生した1992年の時点で、文化遺産は276件。2023年の時点で文化遺産は900件です。よって差し引き624件が1992年以降誕生し、一方で2023年までに121件が個別の遺産として文化的景観が認められているため、121/624≒19.3となり、単純計算ですと文化遺産のうち約2割が文化的景観が認められていることになります。

タイトルとURLをコピーしました