Liverpool – Maritime Mercantile City (United Kingdom) OUV(ii)(iii)(iv)
2004年世界遺産登録 2012年危機遺産登録 2021年削除
■近代イギリスの商業の中心地となった港町
イングランド北西部リヴァプール中心地と埠頭にある6つのエリアは、18~19世紀にかけて栄えた世界に誇る商業中心地のひとつであり、この時代、大英帝国の発展に重要な役割を果たしたとされ、世界遺産に登録されました。
イギリスでは大英帝国時代とも呼ばれる、広義ではカリブやインド、オセアニア、そして香港などのアジアまで領土を拡大していた16~20世紀中ごろの時代を指しますが、ここリヴァプールでは後半の時代に、商業の交易地として栄えたとされています。
そこには奴隷や北欧からアメリカへ渡る移民などの人々の大規模移動の主要拠点であったなど、負の側面もありますが、多くの人々が移動する際の重要な港となったのも事実です。
また、リヴァプールは、現代のドック技術や輸送体系、港湾管理の発展の先駆けともなり、構成する6エリアには、それらドッグやセント・ジョーンズ・ホールをはじめ、重要な商業施設、民間および公共の建築物などが数多く含まれています。
<6つの構成資産エリア>
ピア・ヘッド:スリー・グレイシズ(美を司る3女神)と呼ばれる、ロイヤル・リバー・ビルディング、ドッグ・ビルディング、キューナード・ビルディングが残るエリア。今も19世紀から20世紀にかけての港の繁栄ぶりを伝えています。
アルバート・ドック:美術館テート・リバプール、マージーサイド海洋博物館、ビートルズ・ストーリーなどの観光名所が多く存在しているエリア。1846年に開かれたアルバート・ドックの倉庫は、木材を用いず鉄、レンガ、石だけを使った世界初の完全耐火倉庫だそうです。
スタンリー・ドック保存地域:数多くのドック、橋梁、倉庫などがあり、世界最大級のレンガ建造物とされるスタンリー・ドック・タバコ倉庫が残ります。
キャッスル・ストリート保存地域:中世のリヴァプールの姿を伝えるものであり、キャッスル・ストリート、オールド・ホール・ストリート、などが含まれます。
ウィリアム・ブラウン・ストリート保存地域:リヴァプールの市営建造物群の集まり、世界遺産登録対象になっている特に有名な建物としては、セント・ジョージ・ホール 、ライム・ストリート駅 、ウォーカー・アート・ギャラリーなど。
ロープウォークス:リヴァプールの中でも古くから存在していたエリアで、1715年に建てられたブルーコート・チェンバーズは、リヴァプール中心部に現存する建造物としては最古のものだそうです。
■危機遺産入りとなった開発事業
2012年から危機遺産リスト入りとなった理由には、ピアホールディングスによる開発プロジェクト”リヴァプール・ウォーターズ”によるものです。文化庁作成世界遺産委員会の報告書によると、湾岸領域に関して、登録資産とその緩衝地帯の 一部を含む60 haの地域において30年以上に渡っての実施が予定されました。
プリンセス埠頭からブラムリー・モーア埠頭にかけての海岸沿い2 kmの範囲に広がり、緩衝地帯内における高層建造物群の建設計画も含まれます。
世界遺産委員会では2015年にICOMOSの調査団を派遣するなどし、遺産状況や開発の改善案を提出を実施。
これに対し、イギリス側では建造予定のビルに高さ制限(スカイライン)を設定するなど、遺産全体の価値を損ねない形での開発計画の改善も予定したそうですが、なにせ30年越しの開発計画なので、開発が完了するまでは予断を許さないということで現在も危機遺産リストから脱せない状況のようです。
➡️2021年に登録削除されました。