アウシュヴィッツ・ビルケナウナチスドイツの強制絶滅収容所(1940-1945)(ポーランド)

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Auschwitz Birkenau
German Nazi Concentration and Extermination Camp (1940-1945) (Poland)  OUV (ⅵ)

1979年世界遺産登録

人類の負の側面をもつ世界遺産

ドイツではなく、ポーランドにあるアウシュヴィッツビルケナウの強制収容所は、第二次世界大戦中ポーランドを占領したドイツ軍による建設であり、そこに一般のユダヤ人やポーランド人などを連行し、強制労働や虐殺を行なったとされる場所です。

ここで虐殺されたユダヤ人は400万人以上にのぼるともいわれ、映画「シンドラーのリスト」を見たときには心底恐怖と怒りに震えたのを記憶しています。

世界遺産委員会の3回目、つまり世界遺産誕生から二年目に、この物件は登録されましたが、もちろん建物自体には世界遺産登録にふさわしい価値=顕著な普遍的価値はありません。

しかし、人類の過ちを二度と犯さないように、平和のために、この歴史を「顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)」があったとして、登録基準のⅵが適用されました。

こういった人類の負の側面をもつ遺産を負の遺産とも呼びます。

現在は博物館になっており、ガス室や犠牲者の衣服などを展示しています。

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ところでこの「負の遺産」というのは世界遺産条約では定義されていない言葉ですが、個人的には戦争自体が負の側面を持つと考えていて、それはつまり遡れば古代文明、いや先史時代に関わる遺産も負となりうる、ただ単に近代の戦争物だけが負の遺産と呼称されることには違和感も覚えます。

世界遺産委員会でもこの登録基準ⅵが、本当に負の遺産の基準になるのか、たびたび課題になりました。「原爆ドーム」ではアメリカが戦争関係を世界遺産とすべきではないとし、つまりⅵだけ=戦争という出来事だけで世界遺産にすべきではないという考えでした。

これを機にⅵだけでなく他の基準も併せて登録すべきという注釈が加えられましたが、その後、奴隷制があった時代の面影を残す「ロベン島」が審議された際、ⅲとⅵの申請を上げたが、ICOMOSがⅲが認められないということで、再びⅵだけになってしまうという話にもなりました。結局委員会では逆転ⅲも認めるという、もはや基準が根底から揺れる事態にもなったのです。

所詮人が決めた世界遺産ですから完璧なものはありませんが、「世界平和」につながるのであれば、基準という小さな枠組みに捕らわれる必要はないのかもしれません。

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