オペラハウス(オーストラリア)

2019年撮影

Opera House (Australia)  OUV (ⅰ)

2007年世界遺産登録

2019年撮影 オペラハウス内観

■経緯

独特な外観から注目されがちなのは、設計したヨーン・ウッツン。彼はデンマーク人ですが、コンペで優勝して採用された際、実は一度もオーストラリアを訪れたことがなかった。想像と計算のみで構想したとされ、私が現場に訪れた際に聞いた話でもっとも驚いた点です。

ただ時の政権が変わり、世相が変わったこと、想定以上にコストがかさんだことも影響し、着工(1959)から竣工(1973)までにかなりの時間を要しました。結果、帆型の屋根の工事まではウッツンが指揮を執ったが、館の工事時には監督を辞任し、オーストラリア人建築家が引き継ぐことになります。ウッツンは最後まで完成を見ることなく、生涯を閉じたとされるが、世界遺産としては認定された2007年当時、まだ存命であったことから、生きているうちに世界遺産登録が決定した初めての世界遺産建築となりました(本当に良かった!)。

1981年の第五回世界遺産委員会で最初に推薦された時、ハーバーブリッジなど周辺も含めた登録を検討していましたが、ICOMOSの消極的意見に基づき取り下げたそうです。その後2007年のニュージーランドクライストチャーチでの31回世界遺産委員会での登録決定に至ります。

■建築・設計

<シアター>

プレイハウス:398席    スタジオシアター:364席

<土台>

館内ガイドによれば、海上に突き出た形だが、海面下25mまで打ち込まれたコンクリートの杭が基礎になっているそうです。

実は断面図をみて初めて知りましたが、帆型の屋根と、館はつながっておらず、2重構造になっています。土台は広いピロティ、階段、坂などギリシャ神殿のような構造になっていて、その上にオペラ館、さらにその上に帆型の屋根が載っているような構造なのです。

上部がコンクリの外壁(屋根)、下部がオペラハウスの木造、確かに接合していない 2019撮影

土台部分はブルーマウンテン産の石から作られた畳1畳ほどの大きさの板がチョコレートのように並べられていました。1枚一枚の間には小さな隙間があり、雨が降っても間から海へと流れる仕組み(まるで厳島神社の板床のよう)。

<外壁と屋根>

館はユーカリの1種でできた、ほとんどが木造。音を反射する柔らかい材質とのこと。全部で大きく分けて3つのオペラ館から成ります。

タイルを間近に見ると、少し黄色っぽい 2019年撮影 オペラハウス

外壁のタイルは一見真っ白のように思われがちですが、白と黄色のタイルの組み合わせになっていて、光の反射が強くなりすぎないように調整されている(飛行機などに影響があるらしい)とのこと。タイルはスウェーデン製で、なんと105万6000枚。汚れは自然に流れる設計だが、すでに清掃や張替えは何度も行われているそうです。

ウッツンは屋根を支える部分は柱を使わず全面ガラスにしたかったそうだが、強度の問題で実際はコンクリートになりました。残ったハーバーブリッジを望むガラス張りはフランス産で、垂直ではなく斜めに張り出している理由は夜景観賞時に内部が反射しにくいように工夫されています。

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