シンガポール植物園(シンガポール)

2024年1月撮影 シンガポール植物園 ナッシムゲート内

Singapore Botanic Gardens ( Singapore ) OUV(ii)(iv)

2015年世界文化遺産登録

■きっかけはイギリスの世界遺産!?シンガポールの時代を変えた植物とは

シンガポール中心部に、アジアで初めて植物園として、また自国で初めての世界遺産に登録されたボタニックガーデンがあります。

登録基準上は2つの評価によって、文化遺産に登録されました。

一つがイギリスの世界遺産「キュー王立植物園」からの苗をもとに、19世紀以降の東南アジアにおけるプランテーションゴムの発展に貢献したこと(登録基準ⅱ)。もう一つが同じくイギリス植民地時代の名残としての植物園自体の景観設計(登録基準ⅳ)。

植物園の前進はイギリス統治時代に造られた研究所でした。その目的は、スパイス、パーム油、ゴムといった経済作物の研究として研究所を創ることだったそうです。

シンガポールがなぜこうした研究施設を創ったのか。

遡ること1822年。イギリスの植民地行政官でシンガポール創始者ともいわれるトーマス.S.ラッフルズ(Raffles)らが、熱心な植物学者によって最初に”実験植物園”を設立したことに始まります。

彼はインドネシアの世界遺産「ボロブドゥール遺跡」の発見に寄与した人物であり、また世界最大の花「ラフレシア=Rafflesia」の命名にちなんだ一人でもあるように、探検家であり、研究者でもありました。

創設当時は果物、野菜、香辛料など経済植物の栽培研究が積極的に行われ、この実験植物園は1829年に閉鎖します。

その後1859年に、植民地政府と農業園芸協会とが、現在の「シンガポール植物園」を設立し、ローレンス・ニーベンが監督者および景観デザイナーとして雇われ、現在の植物園の形となっていきます。

この時、東南アジアで天然ゴムの栽培を進めたいイギリス政府の意向を受け、1877年にイギリス・ロンドンにある世界遺産「キュー王立植物園」からゴムの苗木22本が持ち込まれ、ロンドンからきた植物学者リドレー博士の初代植物園園長の就任とともにゴム栽培が始まりました。

しかしこの時代の農産品と言えばコーヒー。シンガポールも多くがコーヒー農園であったため、ゴムプランテーションの拡大には苦労したそうです。幸か不幸かコーヒー豆の木に浸食する病気の蔓延に伴って、ゴムプランテーションに改植することで浸透を図ったのだとか。

また、当時はゴム液を抽出するために生育された木を伐採する方法が採られていましたが、リドレー博士はその方法に異を唱え、斜めに切り込みを入れることで効率的かつ伐採せずにゴム液を抽出する”タッピング法(樹皮切傷法)”を開発しました。

こうした成果もあり、20世紀になると、自動車のタイヤに使われる等で需要も増し、マレー半島の経済を活気づかせたことが世界遺産としての評価につながっています。

現在の植物園には、ゴムプランテーションは見られず、一部のゴムが”ヘリテージツリー“として保存されています。

ヘリテージツリーとは、民間主導で保存が進められている樹木であり、大きさや樹齢、シンガポールにまつわるストーリー等の条件を経て登録されるそうで、植物園内には約60本存在します。

植物園の中央部、見どころの一つに当たる世界最大のランの展示会場の近くに、1本のゴムの木が上記のストーリーとともに保存されていました。

2024年1月撮影 シンガポール植物園 ゴムの木 ヘリテージツリー
2024年1月撮影 シンガポール植物園 ゴムの木 案内板

■花の種類はなんと10,000種以上!東京ドーム20個分の広大な植物園

シンガポール植物園ではゴムの木こそあまり残っていませんが、その他のヘリテージツリーやランなどの様々な花を見ることができ、一部の区域を除いて入場無料!シンガポール国民の憩いの場となっています。

また、現在は毎月1回、日本人のボランティアによる日本語ガイドツアーが開催され、今回はちょうど訪れた時に開催していたので、お世話になりました。日本語ガイドツアーは植物園の中央、ナッシムゲートのインフォメーションセンターに朝10時に集合となっていて、事前予約はできませんので、遅刻厳禁です。

お伺いした話によると、主に駐在の方のパートナーが有志で行っているそうで、この日は年始ということもあってか、30人近くの日本人参加者がいたため、3, 4チームに分かれての開催となりました。

2024年1月撮影 シンガポール植物園 シーリングワックスバーム

最初に案内されたのが、シンガポールを代表する樹木、シーリングワックスバーム。竹のような幹ですが、これは1つ1つが1枚の葉。赤い色が特徴的で、中国では魔除けの色であるとして、シンガポールではホテルやモール等至るところに栽培されています。植物園の象徴として、ロゴマークにも使われており、最寄りのMRT駅を降りるとそのピクトグラムが掲示されているのだとか。

2024年1月撮影 シンガポール植物園 シンポーエア

こちらの可愛らしい花シンポーエアは1日で咲き、1日で花を落としてしまう1日花。

2024年1月撮影 シンガポール植物園 園内

園内はとても広く、1日では見切れません。

2024年1月撮影 シンガポール植物園 ラン園

有料エリアにはなりますが、中央部には一番の見どころともいえる、国立ラン園があります。ランと言ってもこれほどの種類が!と思えるほど、様々な大きさや色とりどりのランがありました。

その他にもショウガ園など、時間的に行けなかったですが、様々な表情を見せる植物園でした。

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