ボロブドゥル寺院遺跡群(インドネシア)

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Borobudur Temple Compounds ( Indonesia ) OUV(i)(ii)(vi)

■イスラム教世界に残る、世界最大級の大きさを誇る仏教遺跡

ジャワ島のほぼ中心に位置する盆地に、8~9世紀に建てられたとされる仏教寺院遺跡ボロブドゥールがあり、近辺に位置するその他の寺院含め計3つの建築が世界遺産として登録されています。

造られたのは、大乗仏教を重んじていたシャイレンドラ王朝時代。最も下に一辺約120mの基壇があり、その上に5層の正方形の壇、さらにその上に3層の円形壇があり、全体で9層という構造となっていて、これは仏教の三界と呼ばれる宇宙観をあらわしているとされます。

総延長が5kmにもなるとされ、東側から時計周りに廻れば仏教の教えを学ぶことができ、救われるのだそうです。

頂上には仏塔(ストゥーパ)が72個あり、その鐘型の中に仏像が納められています。仏塔は石造りですが、漆喰等の接着材を使わずに自重で成り立っているというのですから驚きです。

造られた8~9世紀というと、日本では奈良時代。古墳と比較すると同規模やそれ以上の規模のものはありますが、古墳以外の建造物としてはここまで壮大な建造物を、しかもイスラム教が世界に広がって2、300年程度で遠く離れたジャワで造られたと想像すると、ますます驚きます。

また、ボロブドゥールの背景には「ムラピ山」という現地での聖山があります。噴火によってたびたび災厄に見舞われる存在でもありますが、日本や各国にある仏教寺院の背景である須弥山に相当するのではないかとも思えます。

ボロブドゥール遺跡が発見されたのは1814年。当時、ジャワ島副知事として派遣され、同時に探検家でもあった、トーマス.S.ラッフルズ(Raffles)(ちなみに彼のグループによって発見された世界最大の花の名をRafflesiaと言います)は、広大な森の中に佇む山のような遺跡を発見しました。のちにこれが世界最大級の仏教寺院であると判明し、1907年に本格的な調査が開始されました。

しかし、8世紀に建造されてあと、長い間放置されていたこともあり、石の風化や劣化が激しく、調査は困難を極めます。そこでこの壮大な遺跡を救おうと、インドネシア政府はユネスコに援助を求めます。そしてついにユネスコ主導のもと、ボロブドゥール遺跡の国際的な復興事業が始まり、10年かけて現在の姿に戻ったわけです。

重要なのは、一神教であるイスラム教を中心としたインドネシア政府が、同じく一神教の他教である仏教の寺院を救った、ということではないでしょうか。もちろん、完成式典時のスハルト大統領の発言によって事件があったことも事実かも知れませんが、世界的に見れば、これが世界遺産、人類の文化の多様性が、宗教をも超えて協力したという大いなる事例ではないかと思います。

なお、その他2つの世界遺産に登録された資産は、「ムンドゥー寺院」と「パウォン寺院」です。

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