アウグスブルクの水管理システム(ドイツ)

Albrecht FietzによるPixabayからの画像

※アイキャッチ画像は「Albrecht FietzによるPixabayからの画像」

Water Management System of Augsburg ( Germany ) OUV(ii)(iv)

2019年世界遺産登録

■運河と水道の整備により栄えた美しい街

ドイツ南部、バイエルン州に属する町アウグスブルクと周辺の運河が世界遺産に登録されています。

アウグスブルクはレヒ川を含む3つの川が流れる町です。レヒ運河はホッホアプラスダムができた17世紀以来、飲料水、水車の操作、下水処理に使用されてきました。

19世紀に入って、上流から飲料水を集めるために、ダム近くの運河にろ過プラントが建設されます。これは2007年に廃止されたようですが、水路は、浮遊する氷を水道施設からそらし、その機器を保護するために使用されたため、アイスカナル(氷の水路)として知られるようになったようです。

アイスカナルはカヌーのスラロームの会場として使用されていましたが、傾斜が緩かったためにその後人工的に急流コースを増設。こうしてアイスカナルは世界初の人工水流を使ったコースとして1972年の夏のミュンヘンオリンピックのカヌースラロームの競技で使用されました。今ではここから多くのオリンピックメダリストや世界チャンピオンを輩出しているのだとか。

こうした水の恵みをいち早く取り入れたのが、15世紀にこの町で繁栄した豪商、ヤコブ=フッガー

ヴェネツィアとの香辛料や木綿、麻織物などの交易で財を築き、銀や銅山の経営も行ったとされ、それらの資金を基に金融業にのりだし、この時代の南ドイツの商業の繁栄を「フッガー時代」ともいわるゆえんです。

フッガー家はこうした金融の富によって家の中に水道を取り入れました。

町には運河とは別に湧き水として水道(18世紀の水道管は松の木で作られていたそうです)がひかれ、ヘラクレスの噴水アウグストゥスの噴水に代表されるように、飲める噴水として市民の憩いの場にもなっていきます。

余談ですが、アウグスブルクという都市名はローマ皇帝アウグストゥスが現在のアウクスブルク市の地域にローマ軍の植民都市を築いたことにその起源を持ち、ドイツで最も古い都市の一つに数えられています。

現在、ヴォルフツァーンアウ水力発電所は、こうした水路による発電がおこなわれ、今では街中のトラムの電力にもなっているそうです。環境配慮が進んでいますね。

都市において革新的な水理工学を応用するなかで、段階的に進化してきた持続可能な水管理システムであり、今日まで 7 世紀以上にもわたって続いてきた模範的な水資源利用を伝えています。

構成資産に含まれる建築及び技術的記念物はこれまでの各段階の社会技術の集まりであり、アウグルブルクにおいて続いてきた都市管理及び水管理を生き生きと伝えているとして評価されました。

Werner ReischerによるPixabayからの画像 アウグスブルクの街並み

建築上の様式もアウクスブルクにその痕跡を残しています。特にロココ様式は、「アウクスブルク風」とも呼ばれ、この時代の建造物には、司教宮殿やシェツラー宮殿などがあります。シェツラー宮殿ヘラクレス噴水の近くに立ち、ここではオーストリアのフェルディナンド大公の妻”フィリピーネ・ヴェルザー”の生家でもあるそうです。また、オーストリアのマリーアントワネットもかつてここで一時滞在したのだとか。

■ディーゼル発祥の地

アウグスブルクはまた、自動車や船舶に使用されるディーゼルエンジンの発祥の地とされ、現在も工業の中心地のひとつです。

1858年にフランス・パリで生まれたルドルフ・ディーゼルは、太陽光発電の空気エンジンを含む多くの熱機関を設計しました。

大学卒業後は冷蔵庫のエンジニアとして熱力学の体現に努めたそうですが、1893年にここアウグスブルクで、ルドルフディーゼルのプライムモデルとして鉄製シリンダーを使った車が、初めて自力で走行しました。そして同年、エンジンの特許と改良の特許を取得したそうです。

そんな背景から、日本でも滋賀県長浜市や兵庫県尼崎市が、同じ工業都市としてアウグスブルクと姉妹都市提携を結んでいます。

今では青年使節団を相互に派遣したり、シンポジウムを開催したりし、相互の関係性を高めているようです。

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