Historic Centre of Naples (Italy) OUV (ⅱ)(iv)
1995年世界遺産登録
■新しい都市の名の通り、時代とともに変わり続けた街並み
イタリア南部・カンパニア州の州都、ナポリには、地中海世界の様々な文明の影響を受け、時代と共に変わり続け、そして今なお残るナポリ歴史地区、マレキアーロ村、サントストラト教会を含むカザーレ地域、ヴィラマンゾ地域の4か所が世界遺産に登録されています。
ナポリとは、古代ギリシャによって建設された植民都市はかつて「ネアポリス(新しい都市)」と呼ばれ、転じてナポリと呼ばれるようになったそうです。
古代ギリシャ⇒古代ローマ⇒ビザンツ帝国の領土⇒8世紀からはナポリ公国として独立⇒ノルマン人やオーストリアの領土⇒1861年にイタリア王国に併合
こうした時代の移り変わりに伴って例えば、ゴシック様式のサンタ・キアーラ教会、13~14世紀のヌオーヴォ城などが、今に残る代表的な歴史的建造物として作られていきました。登録基準のⅱは、まさにそんな文化や歴史の交差があったことの現れでしょう。
またこうした歴史的な背景は、美しいナポリ湾と、かつて噴火によって大災害をもたらしたヴェスヴィオ火山、といった自然豊かな地政学的な理由もあると思われます。
ヴェスヴィオ火山によって大きな被害を被った世界遺産「ポンペイ」のページも参照ください。
■ナポリの街と史跡
世界遺産の登録範囲である領域の西部、スパッカ・ナポリは古代ギリシャ時代から続く街並みだそうです。日本でもよく言われる下町とでも言いましょうか。
海側はよくイタリアらしい歌でもおなじみのサンタルチア。また、港から突き出したように建てられた卵城が観光名所にもなっています。
卵城はかつて魔女が隠した卵を見つけて割ると、城が崩れるという伝説があり、それにちなんだ呼称で、カステル・デッローヴォという名称です。
ナポリの聖人サン・ジェンナーロ(San Gennnaro)は、ナポリの町をヴェスヴィオ火山の噴火、地震やペストなど、あらゆる災害から守ると言われている聖人です。ナポリの人々にとってはとても特別な存在だそうで、命日が祝日にもなっています。
そんな彼を祀っているのが「サン・ジェンナーロの礼拝堂」。バロック美術の内装です。下記サン・ジェンナーロの礼拝堂の主祭壇、中央のブロンズ像と左手前の着衣の銀製像はサン・ジェンナーロを示しています。
この礼拝堂に隣接するのが、「サン・レスティトゥータ教会」。
ここでは『聖ジェンナーロとレスティトゥータに囲まれる玉座の聖母子』のモザイク画を見ることができます。
またこのレティストゥータ教会とジェンナーロ礼拝堂を構成するのが、ナポリ大聖堂。いくつもの教会が時代とともに折り重なり、さらに礼拝堂などが追加されたため、ファサードはゴシック調とも、ルネッサンス調とも捉えられ、ジェンナーロ礼拝堂はバロック調の内装であり、様々な時代を感じることができます。
ナポリの広場で最も有名な広場といえるのがプレビシート広場。
ここには、19世紀に完成し、ローマのパンテオンを参考にしたとされる聖サンフランチェスコ・ディ・パオラ教会(Basilica di San Francesco di Paola)があります。
この教会に向かって広場の中心に、馬にまたがるブルボン家スペイン王カルロ3世と、その息子両シチリア王フェルディナンド1世(FerdinandoⅠdelle due Sicilie)の像がたちます。
広場では目隠しをして三回回ったあと、この二体の像の間を見事通ることができたら願い事が叶うとされ、観光客にも人気です。かつて19世紀にサヴォイア家の王妃であるマルゲリータ王妃(あの王道ピザの名前の由来になったとも言われる)は、囚人へのチャンスとして使ったとか(これだけ聞くと恐ろしいですが、ナポリの市民からは愛されていたようです)。