Historic Centre of the City of Salzburg ( Austria ) OUV(ii)(iv)(vi)
1996年世界遺産登録
■近世、音楽と芸術が栄えた宗教都市
オーストリア北西部の山と川に囲まれた自然豊かな地域に、中世から近世にかけてのバロック調の街並みが残る小さな町、ザルツブルク。
現代の街としては小さいながらも、城塞から教会のような歴史的建築物だけでなく、ショッピング街も昔ながらの街並みを保持していて歩くだけでも美しい街でした。
世界遺産には一部のエリア、主に旧市街が登録されています。
ザルツブルクの歴史は古く、8世紀頃から司教都市、そして大司教座として宗教都市の機能をはたしてきました。
12世紀には歴史的に有名な”カノッサの屈辱事件”の報復を恐れて、教皇派が建築を命じた「ホーエンザルツブルク城」が丘の上に誕生します。
街の多くの建造物は、近世になってから。特に16世紀後半の大司教はイタリアとの交流から、バロック様式が積極的に取り入れられ、”北のローマ”と呼ばれるようにローマに次ぐ宗教都市にまで栄えたそうです。そこにはザルツ「塩」の産出によって大きな富を得ていたことが大きく関わっていました。
「ザルツブルク大聖堂」:もとは8世紀頃に建てられたものですが、何度も増改築され、ファサードから伝わるように17世紀にバロック様式に建て替えられました。3階層に分かれ、複数の四角いオーダー(柱)がある、バロック様式の特徴として見て取れます。
内部の身廊から祭壇までの彫刻素晴らしく、光を多く取り入れる工夫もしてあってとくかく荘厳な雰囲気が伝わりました。特にドーム天井を下から見上げた時の美しさは息をのむほどでした。
「ミラベル宮殿」:17世紀の大司教が愛人のために造ったとされる宮殿で、ちょうど世界遺産の資産エリアの境界に位置します。映画サウンドオブミュージックでも使われたので、観光地としても有名になりました。
ザルツブルクはモーツァルトの生誕の地でもあり、音楽の街としても知られます。ここミラベル宮殿ではモーツァルトも演奏したことがあるということでも知られています。
「モーツァルトの生家」:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。ここザルツブルクで誕生した生家とされる家を見学することができます。内部は写真撮影禁止だったのですが、今では博物館になっており、ここも世界遺産の範囲に含まれます。
アルプスより北で最初にオペラが上演されたのがザルツブルクだとされています。大司教座であったこともあり、宮廷で音楽イベントが催されていたことも多かったと想像できます。現代のザルツブルクにおいても、音楽祭を始めとして、オペラ、演劇、コンサート、様々な芸術イベントが実施されているのです。
ザルツブルクの街はイタリアやドイツ等の文化の交流をもち(登録基準ⅲ)、中世から20世紀にかけてヨーロッパで流行したバロック調の街並みを保存し(登録基準ⅳ)、モーツァルトに代表される音楽や美術、芸術と関連している(登録基準ⅵ)町として世界遺産に登録されました。
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