シェーンブルン宮殿と庭園群(オーストリア)

2012年2月撮影

Palace and Gardens of Schönbrunn ( Austria ) OUV(i)(iv)

1996年世界遺産登録

■パリ・ヴェルサイユを凌駕すべく建てられたハプスブルク家の離宮

17世紀末、時の神聖ローマ帝国皇帝、レオポルト一世が命じた夏の離宮、シェーンブルン宮殿。それは元あった狩猟用の館を改築し、フランス王朝に対抗してヴェルサイユ宮殿を超える建築を目指したものでした。

そのためスウェーデンのドロットニングホルム宮殿と同様、バロック式の建築を意識したつくりとなります。

設計したのはオーストリアの建築家フィッシャー・フォン・エルラッハ。彼はローマの彫刻家で、サン・ピエトロ大聖堂の天蓋を作ったジャン・ロレンツォ・ベルニーニに弟子入りしてイタリアのバロック様式の彫刻や建築を16年かけて学び、帰国後に宮廷建築家に選出されます。

彼が手掛けた建築には、ウィーンのホーフブルク宮殿内にあるオーストリア王立図書館等があり、それは現在でも世界有数の美しさをもった図書館でした。

しかし国の財政難から彼の設計通りの壮大な計画通りには進みませんでした。

元は黄金に輝く宮殿設計だったそうですが、18世紀半ばの実質的女王マリア・テレジアは財政難から金に近い黄色に変えたという話もあります。今ではその美しい黄色い外観も、マリアテレジア・イエローの名で親しまれていますが・・・。

2012年2月撮影 マリアテレジアイエローとオーダー(柱)を多用したバロック様式

エルラッハの設計は次の、そしてまた次の建築家に引き継がれ、最終的には当初とり縮小された建築となりました。それでも特にマリアテレジアを始めとしてハプスブルク家に好まれ、特に内部の装飾芸術は世界でも類を見ない美しさとなりました。

この室内装飾の華美なまでの美しさをもった建築をロココ様式と呼んでいます。1400室の部屋があり、現在その内の40室が公開されているそうです。

2012年2月撮影 グローセ・ギャラリー

特に有名なのがナポレオン帝国崩壊後に開催されたウィーン会議で舞踏会の会場となった、写真の「大広間 グローセ・ギャラリー」です。「会議は踊る、されど進まず」の言葉もここで生まれたとか・・

またヴェルサイユ宮殿同様、バロック式の庭園も重要な資産です。私は冬に訪れたので雪で見れませんでしたが、特に現存するのはマリア・テレジア女帝の時代から造園がはじめられました。

凱旋門「グロリエッテ」、3つのパビリオンからなるヨーロッパ最大の温室「パルメンハウス」、現存する世界最古の動物園とも言われる、「シェーンブルン動物園」まであります。この動物園はマリアテレジアの夫である皇帝フランツI世が子供たちのためにと造ったものだそうです。

そんな幾何学的なバロック式庭園以外にも、日本式の庭園もあるそうです。

そんなシェーンブルン宮殿は様々な経緯と外部・内部の技術を取り入れた総合芸術の例として登録基準(ⅰ)、そしてそこに影響を与えたハプスブルク家の栄華を示す証拠として登録基準(ⅳ)が認められ、世界遺産に登録されました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました