ドロミーティ(イタリア)

AntelaoによるPixabayからの画像 ドロミティ

※アイキャッチ画像は「AntelaoによるPixabayからの画像」

The Dolomites ( Italy ) OUV(vii)(viii)

2009年世界自然遺産登録

〇ダイナミックな岩肌とどこかノスタルジーな牧草地が生む景色

北部イタリア・アルプスの中でも、尖塔のようにつきでた尖峰や岩壁、氷河やカルスト系の地盤など見事で様々な景観をもつ、ペルモ-クローダ・ダ・ラーゴなどの9つのエリアが世界遺産に登録されています。

ドロミーティはフランスの地質学者の名前に由来するそうですが、このあたりの地層は、ドロマイト(苦灰石と呼ばれ、石灰岩の一種)を多く含むようです。それはかつてここは海であったことを示しており、中生代のサンゴなどの生物の化石等が極めて良好な状態で保存されています。

このあたりは標高3000m以上の山が18峰あり、最高峰は9つの登録エリアの1つである、標高3343mのマルモラーダ山。ほぼ富士山と同じ高さですが、特徴的なのは、切り立った岩壁。石灰地質は風雨に浸食されやすく、こうした特徴的な景観が造られているのでしょう。

こうした、地形学的にも、また景観上も多様で見応えのある点が評価されています。

そう、景観と言えば、石灰質の無機質な山々を魅了する、モミカラマツの森、広大な牧草地や美しい湖が演出している点も忘れてはいけません。これまで数々の写真や絵画の題材にもなり、まさに「ドロミーティの景観」として人々の記憶に刻まれてきたのです。

ドロミーティに育つカラマツは、「ヴェネツィアとその潟」の素地になっている泥地に埋め込まれた木材や、かつては造船に使われてきたものです。この森の麓にはカラマツの加工工場があり、今も稼働するダ・ヴィンチが設計したとされる水車による、自動のノコギリが使われています。電気や化石燃料を使わない、非常にサステナブルな工場だと言えるでしょう。

〇世界中のロッククライマーを魅了する切り立った絶壁!

切り立ったむき出しの岩肌はまた、世界中のロッククライマーを魅了し、クライミングのホットスポットとなっています。文化的・自然的な歴史に比べれば短いものの、近代的な本格的な登山としての歴史は長く、19世紀後半に誕生したとされるアルピニズム発祥の地の一部でもあります。

アルピニズムは、1760年にドロミーティ含むヨーロッパを横断するアルプス山脈で発祥したとされるスポーツであり、芸術であり、精神的な概念そのものでしょう。

単なる登山ではなく、適切な技術、機器、および斧やアイゼンなどの特殊なツールを使用して、身体的、技術的、知的能力が求められます。さらに高山の環境に関する知識、実践の歴史と関連する価値観、自然環境、変化する気象条件、自然災害に関する知識を持ち、自然環境への配慮も不可欠です。

また単なる自己責任とはさせず、クラブ等の組織で活動し、チームスピリットを重視することが重要だそうです。

こうしたアルピニズムは2019年に、イタリア・スイス・フランスの3か国共同の申請により、世界無形文化遺産に登録されました。

とはいえドロミーティの一部のエリアでは、実は経験豊富でなくても、登れるところもあるようです。例えば、頂上に「線路」と呼ばれるルートが幾つか存在しているところです。線路は、うまい具合に金属製のケーブル(ロープ)や、つり梯子や、つり橋がついていて、ひっかけることで進めます。

この線路、実は第一次世界大戦のとき、ここで激しい戦闘を交えたイタリアとオーストリアの軍隊の手によって道筋を記した古いコースとして今なお残っているというのですから、それが今も別の形で活用されているとは感慨深いですよね。

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