奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島(日本)

2022年10月撮影 奄美大島

Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, Northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island ( Japan ) OUV(x)

2021年世界遺産登録

■まるで東洋のガラパゴス諸島。大陸から切り離された島々に沢山のシマ固有の生き物が!

奄美群島とは、大島,加計呂麻島,請島,与路島,喜界島,徳之島,沖永良部島,与論島の8つの有人島からなる島々。鹿児島県からはその中の奄美大島と徳之島,そして沖縄県からはやんばるを含む北部と西表島が世界遺産に登録されています。

奄美大島と徳之島は、IUCNが指定するアマミノクロウサギに代表される絶滅危惧種を含む多様な生物が生息・生育していることが評価され、そうした多様な生態系と絶滅危惧種が保存されている地域として登録基準(ⅹ)が認められました。

他にも国土の面積の0.2%に満たない奄美大島において、国内全体の生物種の約13%が確認されているのです。

しかし世界遺産に登録されるまでは長い道のりでした。

2013年 暫定リスト

2017年 奄美大島国立公園化、そして推薦書提出

2018年 IUCN「登録延期」勧告、推薦取り下げ

2021年 登録

複数の島に渡って、それも各島ごとに保存されたエリアが点在しており、世界遺産として保全していくためには、点と点の間もバッファーゾーンとして保護する仕組みが必要だったのです。

奄美大島の魅力

2022年10月撮影 金作原

奄美大島の世界遺産はもっとも市街地から近いのは「金作原」。

奄美大島の中心街の名瀬から車で約30分いくと、世界遺産エリアの入口ともいえる金作原に踏み入れ、ツアーのメインコースにもなっています。舗装された道は狭く、中型バスが通れる程度で、自然の保全のためにガイドツアーは一度に2台までと決めているとのこと。その他の自動車は一般道のため制限はできませんが、金作原を案内できる認定ガイドのみがその先のトレッキングを許されています。

今回私がお願いしたガイドは、奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の二代目会長を務める喜島浩介氏。彼曰く、ガイドは奄美大島エコツアーガイド連絡協議会に登録される必要があります。さらに深い知識をもったガイドは、奄美群島エコツーリズム推進協議会が認定する認定ガイドになれる構造になっているそうです。屋久島の認定ガイドと同様、2年間の住民税をおさめ、かつ他の登録ガイドからの推薦が必要など、地域に関わりのあることが求められるのでしょう。

2022年10月撮影 金作原 ヒカゲヘゴ

金作原のトレイルコースはなだらかで段差もほとんどなく、スニーカーでも回れます。だいたい往復1~2時間程度の一本道で迷うこともないので、ユニバーサルに誰でも参加できそう。

歩いていると、しずかな森に時折”ルリカケス“の騒がしい鳴き声がします。IUCNが指定する絶滅危惧種であり、見た目の美しさとは想像ができない声でした。一方の同じく奄美に生息する”琉球アオバト“はとても穏やかな鳴き声。

他にも、道を歩くとずいぶんほっそりしたクモのような”ザトウムシ“によく出会しました。本当にジブリに登場する「釜爺」のよう。ところが実はクモではなく、糸も出さない。目がなく、盲目=足で探ってあるく姿から座頭虫と名付いたとか。

植物はなんといっても”ヒカゲヘゴ“の特徴的な幹!

シダ植物の中でも古生代から生き残る種族だそうで、奄美大島以南の限られた地域でしか見られない。成長すると葉が根本から落ち、その跡がまだら模様になって残るのです。

2022年10月撮影 金作原 琉球瑠璃の木

琉球瑠璃の木“は葉の根本にブルーベリーのような果実を付ける。季節ではなかったのでまだ緑色でした。

2022年10月撮影 金作原 リュウキュウサギソウ

リュウキュウサギソウ“もIUCNの絶滅危惧種に指定されています。

サツマサンキライ“。この葉は米と一緒に焚くともち米のようになるのだとか。殺菌作用があるとも言われます。

変わった名前の木も多いんです。”ショウベンノ木“は切ると樹液が沢山出るからだと。”バクチノ木“は、皮がむけたような肌の幹をもつ、サルスベリのような木ですが、賭けに負けて身ぐるみ剝がされたかのように見えるからだとか。

こうした植物の特徴や名前の由来などを聞きながら歩くと、本当の自然の価値が分かってきます。森を歩くなら、やはり認定ガイドにお願いしたいものです。

この日はあのトトロが傘に使っていた大きな葉のモデルになったとされる”クワズイモ“の葉に、ちょこんと座った絶滅危惧種の”アマミハナサキカエル“が、金作原の入口でお迎えくださいました。

2022年10月撮影 金作原 アマミハナサキカエル

世界遺産であり続けるための課題

世界遺産委員会では登録の際に、4つの課題を出されました。

  • 特に西表島の観光客数を現状の半数以下に
  • 絶滅危惧種のロードキルを減らす
  • 河川の人工的インフラを自然の形に
  • 緩衝地帯の森林伐採の制限

2022年12/1までに実施報告を提出する必要があります。観光客の制限のために入島者数を公表する仕組みや、ロードキルを減らすための防護柵や動物用のトンネルなどの環境整備を進めていますが、課題も残されているようです。

こうした課題には、環境省、林野庁、自治体、自然保護団体、観光団体等を含む「世界自然遺産地域連絡会議」が対策推進をしています。他にも例えば奄美市の場合は公民連携組織「世界自然遺産プラットフォーム」を形成し、金作原に集中する観光客の分散化や、環境整備のための財源として宿泊税や協力金の導入検討がなされています。

私も協力金の導入の実証事業で少しばかり協力をさせていただいています。

奄美のシマの自然や文化を、奄美の住民だけでなく、観光客とともに守り続けられる仕組みに繋がればと期待します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました