屋久島(日本)

2020年11月撮影

Yakushima ( Japan ) OUV(vii)(ix)

1993年世界遺産登録

■小さな島に日本の植物相の縮図!

鹿児島空港から直行便で30分ほどの海上に位置する屋久島。世界遺産に指定されているのはその約20%にあたる中心部です。一方原生林とされるのはさらにほんの一部です。

行ってみてわかったことは、平地は海岸沿いのほんの一部で、九州最高峰の宮之浦岳(1,936m)を主峰にした切り立った山岳部がほとんどを占めるということ。航空機からも見えますが、狭い島内に切り立った山は急こう配を成していて、標高によって亜熱帯から亜寒帯の植物が連続して垂直に植生している点が特徴です。

例えるなら日本の南端に位置しながら、北海道に生息する植物まで、垂直に分布する植物相を見ることができる、他には類を見ない環境なのです。

  • 海岸付近にはアコウ、ガジュマル等の亜熱帯性植物
  • 海岸部から標高 700~800m付近まではシイ類、カシ類を主とした暖温帯常緑広葉樹林
  • 標高 700~800m付近から標高 1,200m付近までは暖温帯針葉樹林
  • 標高 1,200m~1,800m付近までは冷温帯針葉樹林、その上部の山頂部にはヤクシマダケ、ヤクシマシャクナゲ
  • 1,600m付近には、ミズゴケ、コケスミレ等の冷温帯性

■樹齢1,000年を超える杉はここだけ!

屋久島で一番の人気アクティビティはトレッキング。中でも縄文杉を目指すルートは朝5:30スタートで17:30に戻ってくる約10~12時間のトレイルは、時間的にも体力的にも厳しいにも関わらず大人気です。

人気トレイルでは標高 600m付近から 1,800m付近かけてスギが分布します。一般的なスギの寿命は最大 800 年程度とされていますが、雨が非常に多く湿度の高い屋久島では、天然スギの生長は非常に遅く、樹脂が豊富で年輪が緻密であるため腐りにくいという特徴を有し、樹齢が千年を超えることも珍しくないのが特徴。

これには、花崗岩で形成され、土がない土壌であることも大きく影響しています。木は岩の大地にしっかりと結びついていて、また倒れ木から二代目が発芽して育ったものも多くあります。

オーストラリアの世界遺産「ゴンドワナ多雨林」にある南極ブナ(詳細はコチラ)は、とにかく降雨量が多くて根が地中に伸びず、地上を這う形で浮き出ていますが、屋久島は岩の上なので根が地中に埋もれないという別の原理になります。

ウィルソン株(1,030m)
ウィルソン株の中からのハートの撮影スポット。大人10人以上入れるほどの広さ!

杉の中でも1,000年未満のものは小杉と呼ばれ、上のハートから望めるような比較的幹が小さいもの。これらは日光を求めて高く伸びていくが、ウィルソン株のように1,000年を超える屋久杉と呼ばれる長寿のものは、その過程で台風や雷に打たれ、折れて根だけが残っている形が多いのです。

現在見つかっている中で最大の大きさを誇るのが縄文杉と呼ばれる、樹齢3,000年とも言われる巨大な杉です。

2020年11月撮影 縄文杉

杉の幹回りは、根から1.2mの高さの断面の周囲を測るそうですが、その長さは16.4m!現在見つかっている杉の中では最大だそうです。非常に貴重なため、内部を切って調べるわけにいかないため、樹齢は正確には不明だとか。

■屋久島世界遺産地域管理計画

世界遺産範囲と原生林範囲

屋久島は現在、様々な保護制度に管理されています(屋久島原生自然環境保全地域、屋久島国立公園、屋久島森林生態系保護地域、特別天然記念物、県指定鳥獣保護区、保安林・・・)。そしてMAB計画(詳細はコチラ)の生物圏保存地域(BR)と大部分が重複しています。

<歴史>

1642 年ヤクスギの伐採がはじまり、明治時代に入り、屋久島の山林の大部分は国有林に編入。

1924 年には、当該区域が屋久島スギ原始林として国の天然記念物に指定。昭和 30 年代にかけてパルプ用木材の伐採が行われ、本格的な伐採活動へ。

1954 年には屋久島スギ原始林を特別天然記念物に格上げするとともに、1964年には国立公園に指定。

1981年 MAB計画の生物圏保護地域に指定

1991年屋久島環境文化懇談会が発足⇒世界遺産登録に言及。1992 年10 月には世界遺産委員会に推薦書を提出し、1993年12 月に白神山地とともに日本で最初の世界自然遺産に登録。

■登山道を歩いて・・・

実際の登山道は杉以外にも驚きがいっぱい!

2020年11月撮影トロッコ道や橋

まずは登山開始から山道までの2時間はトロッコ道。と言ってもとにかく道幅が狭く、橋には手すりもないのでアクティビティさながら。

2020年11月撮影 山犬とサンが登場しそう

川が流れる石は、巨大な岩!花崗岩の岩の大きさは他の国でもあまり見ない。

2020年11月撮影

水がとにかく綺麗。杉が生育しにくい花こう岩の岩盤=土がない。また常葉樹が多く、落ち葉が少ないので腐葉土がない。つまり大地を流れる水にはミネラルも養分もないため、魚も住んでいないのだとか。一方で軟水で飲むにも適しています。

2020年11月撮影 株の苔

苔が美しい!切り株や倒れ木に生える苔はCGのような美しさ。腐葉土がなく、虫も居ないのがトレイルのいい所。とうとう10時間歩いて蟻1匹見ませんでした。。。

<屋久島ガイドに案内していただきましょう>

屋久島が世界遺産であることは周知の事実ですが、赴く場合はやはり島のガイドにお願いしたいものです。今回は屋久島公認ガイドのライセンスを保持している島いとこ様にお願いし、植生や屋久島の歴史を教えてもらい、ただ見るだけでなく、屋久島が本当に守ろうとしているものを学ぶことができました。

世界遺産になり、ジブリ映画”もののけ姫”のモデルになり、2000年ころに観光客や登山客のピーク。それと共に島の外から森や海のアクティビティを案内するガイド業が増えていったそうです。

今ではガイドの8割が島外出身。彼らを否定するわけではないですが、書籍やweb・屋久島以外の専門知識のガイドと、子供のころから屋久島と共に過ごしてきたガイドとでは、話す内容も違うし重みも異なります。

そんな屋久島の昔を語れるガイドを増やそうと、数年前に立ち上げたのが「屋久島公認ガイド 」です。公認性にすることでその特色を残し後世に伝え、広めていくことにしたのだそうです。

しかし一方で高齢化が進む彼らの中には、この先ガイドを続けられる時間を考えると、わざわざ登録する必要性がない、という考えの方もいるのだとか。

歴史や文化を語り継ぐには正しい、そして実体験にもとづたものが望ましいと想いつつ、現実はそんなに簡単ではないことを感じました。

どのガイドを選ぶかは人それぞれですが、単なる世界遺産や国立公園というような枠組みを取り外した、屋久島に生き、”森と共に生き”てきた歴史を知りたい場合は、ぜひ屋久島公認ガイドをお勧めします。

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