バジ・ビムの文化的景観(オーストラリア)

denisbinによるflickrからの画像 バジビム

※アイキャッチ画像は「denisbinによるflickrからの画像」

Budj Bim Cultural Landscape ( Australia ) OUV(iii)(v)

2019年 世界遺産登録

■世界で最も広範で最も古い養殖システム

オーストラリア南東部、タスマニア州近くの海岸に接近した地域に、バジビム・ティレンダラ・クルトニチの3つに区分されたエリアが世界遺産に登録されています。

この広大な大地の一帯は、今から約 27,000 年前、エクルズとネイピアによる火山の噴火後の溶岩流によって形成されたものとされています。そして、その大地を流れる川を、北部のコンダー湖に向かって遡上するクーヤン(短いヒレウナギ)を捕獲、貯蔵、収穫するために開発された水路、堰、ダムといった、いわば複雑な養殖システム全体が世界遺産として評価されました。

この養殖システムを作り上げたのは、アボリジニグンディジマラ族です。なんと8,000年前から養殖の考え方や技術が形成されていたというのです。日本においては同じ世界遺産でいうと、縄文時代の「北海道・北東北の縄文遺跡群」と同じような時代です。縄文人やオーストラリアの他のアボリジニの狩猟・採取といった文化とは一線を画しますから、とても驚きです。

ウナギは繁殖のためにニューカレドニアに渡り、その後このバジ・ビム地域の湖に戻って生息するそうで、 体長は1メートル、太さは人間の腕ほどにまで成長します。 グンディマラによって建設された石垣の中には、長さ約 50 メートルのものもあり、水路を遮断し、その高さの調整によって水位が変えられました。これには、気泡が多く、崩れやすい溶岩の大地であったことも起因しているようです。

グンディマラ族は、ウナギの幼魚を育て、必要な分だけ食事に使うことで、養殖という考えを築いていったと考えられています。この地域には他にも水鳥、アヒル、カンガルー、等のたんぱく源や植物も多く、彼らは他のアボリジニのような遊牧生活をする必要があまりありませんでした。まさに北海道・北東北の縄文人が海の恵みによって移動の必要性がなかったように、定住する生活様式を持っていたのです。

こうした定住生活と、養殖システムによって作られた景観が、まさに文化的景観として世界遺産委員会で評価を得ました。

グンディマラ族は小川や水路沿いの特定の場所を「所有」しており、オーストラリアの他のアボリジニ集団とはまったく異なる土地体系を与えていると主張する人もいるそうです。 彼らには世襲の首長がいて、かなり階層化された社会があったとも考えられています。

しかし、1840年に白人の牧畜民がやって来ると、グンディマラには終焉が近づいきました。 彼らは土地を追われ、 多くの衝突があり、多くが犠牲になったようです。現在、彼らの土地ではさらに多くの考古学調査が行われています。

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